- はじめに
- 小児の術後覚醒時興奮は、ハロセンに比較してセヴォフルレンで発生率が高い:無作為臨床試験のメタ解析
- セヴォフルレン麻酔での術後覚醒時興奮の予防にクロニジンとミダゾラムを前向き無作為臨床コントロール試験で比較する
- 小児で扁桃腺とアデノイドの外来切除術で麻酔後の回復に影響する要因の解析
- 小児の術後覚醒時興奮:問題多く回答はわずか。
- 経口ミダゾラム投与で術後の児の振舞は改善するか:EBMのアプローチで
- 成人患者のPACUでの術後覚醒時興奮
- アデノイド摘出で小児のセヴォフルレン麻酔の術後覚醒時興奮をトロピセトロンかクロニジンで防止する
- 小児の脳MRI処置をセヴォフルレンで行う際に麻酔終了直前に少量のケタミンかナルブフィン使用で術後覚醒時興奮が防げる
- セヴォフルレン導入後にデスフルレンに切り替えて維持した場合、セヴォフルレンを麻酔全体で使った場合より、小児の術後覚醒時興奮は発生しにくい。
- 小児の術後覚醒時興奮に対してセヴォフルレンとハロセンで麻酔する場合に仙骨麻酔の影響
- セヴォフルレン麻酔後の興奮をデクスメデトミジンの一回投与で防止できる
- 手術なしのセヴォフルレン麻酔後に少量フェンタニルを投与して覚醒状況が変化する
- 小児の術後覚醒時興奮の前向きコホート研究
- 小児での術後覚醒時興奮:セヴォフルレン麻酔とプロポフォル麻酔の比較
- 術後覚醒時興奮へのフェンタニルの効果とセヴォフルレンとデスフルレン
術後覚醒時興奮:はじめに
術後覚醒時興奮ないし譫妄は、小児麻酔では大きな問題であり、もちろん成人でも発生する。成人の発生率はたしかに低いが、発生すると抑制が大変で手間がかかるので、無視もできない。
発生率と要因の検討では、患者の年齢(小さい子は発生しやすい)、手術の性質(扁桃腺・アデノイド)などはわかっているが、セヴォフルレンではハロセンと比較して明らかに高い。デスフルレンはセヴォフルレンとは差がないようだが、いずれにせよ日本では使わない薬物なので無視してもよかろう。プロポフォルでは発生しにくいらしいのがありがたいが、といって絶対に起こらないわけではなさそうだ。
治療法としてはいろいろな薬物が検討され、有効として以下の使用法が提案されている。
フェンタニル:痛みのないMRI などを対象とした研究では1μg/kgで有効だが、痛みのある手術を対象とした研究では2.5μg/kg くらいが必要としている。痛みも関係しているが、それだけでもないという証拠でもあり、この点は理解できるだろう。
クロニジンとデクスメデトミジン:いずれもα2アドレナリンアゴニストだが鎮静作用が知られている。フェンタニルとともに、微量では効きにくくある程度の量が必要なのが特徴である。
ケタミンとナルブフィン:意外な薬物の登場である。ナルブフィンは日本に製剤があるか不明だが、ケタミンは麻酔科医にはなじみの薬物だから使ってみる価値があるかもしれない。
オンダンセトロンとトロピセトロン(商品名ナボパン):いずれも5HT3 拮抗薬だが、鎮静作用があり有効との結論が出ている。
ベンゾディアゼピン:術前の鎮静に有効なミダゾラムなどのベンゾディアゼピンが、この術後興奮には効果が乏しく、Lepouseの論文では術前のベンゾディアゼピン使用で、逆に術後興奮の頻度が高まるとの結論を出している。
以前、このテーマを調べた時には、フィゾスチグミンの有効性が強調されており、私自身も有効という印象を抱いていた。今回は研究論文はもちろん、総説にも登場していない。この点も意外だった。
[解説者]諏訪邦夫
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1.日本語タイトル: 小児の術後覚醒時興奮は、ハロセンに比較してセヴォフルレンで発生率が高い:無作為臨床試験のメタ解析
[目的]小児の術後覚醒時興奮の発生率がハロセンとセヴォフルレンでどう違うかを、無作為コントロール臨床試験の結果を集めてメタ解析で比較する。
[背景]セヴォフルレンは特に小児麻酔に頻用する吸入麻酔薬だが、ハロセンと比較すると術後覚醒時興奮が発生しやすいという意見が強い一方で、コントロール試験の結果では必ずしもそんなことはないともいい、決着はついていない。
[対象]Medline, Embaseなど6つのデータベースから抽出。英文論文のみ対象。
[方法]セヴォフルレンとハロセンで麻酔した小児で、術後覚醒時興奮の発生率を比較した臨床試験を広く探索した。「術後覚醒時興奮」に関してはSikich らの定義を採用した。個々の論文の規準が要求に合致するかを、著者たち二人は独立に評価しデータを抽出した。規準は「前向きコントロール試験」、「ハロセンとセヴォフルレンの比較」、「12歳未満の小児で外来手術」、「発生率の記述」のすべてを満たすことである。抽出したデータをMantel-Haenszelモデルに当てはめて検定して全体をプールし、オッズ比とその95%信頼限界を算出した。論文の偏差を評価するのに"funnel plot"を使用した。さらにサブグループとして、年齢7歳未満・手術の種類として鼓膜切開・疼痛治療として区域麻酔併用の有無・前投薬にベンゾディアゼピンの有無などが術後覚醒時興奮発生率に及ぼす影響も評価した。
[結果]
1)求めた規準に合致した論文は23篇あった。
2)セヴォフルレンの患者が 1,252例、ハロセンの患者が1,111例であった。
3)データの非統一性は統計学的に否定できた。
4)データ全体の術後覚醒時興奮発生率はセヴォフルレンでオッズ比が2.21と高く、95%信頼限界値は 1.77-2.77(P < 0.0001)であった。生の発生率は、セヴォフルレンで327/1252(26%)、ハロセンで185/1111(17%)であった。
5)"funnel plot"でみる限り、論文の偏差はみつからなかった。
6)サブグループのすべてで、術後覚醒時興奮の発生率はセヴォフルレン群でハロセン群より高かった。
7)オッズ比の数値は、23論文中20で1より大つまりセヴォフルレンでの発生率が高いとし、残る3例のうち2例で0.93と0.95で、セヴォフルレンの発生率が低いとしたものは1論文だけであった。
[結論]小児の術後覚醒時興奮は、セヴォフルレン麻酔でハロセン麻酔より発生率が高い。
[解説者註]蔵谷紀文、大井由美子両先生の発表である。メタ解析のやり方は図もつかって詳細に、また個々のデータも詳しく説明されている。"funnel plot"は、メタ解析の際の確認手段の一つのようだが、私の理解を超えている。"Mantel-Haenszel"検定もむずかしくてわからない。狙いや手順は明快だが解析手法が難解で、この点は著者の記述をそのまま信用しよう。メカニズムは考察だけだが、「覚醒の速いセヴォフルレンは興奮を起こしやすい」という論理に対しては「同様に覚醒の速いプロポフォルでは興奮が起こりやすいことはない」という事実を指摘して、速度だけではなかろうという傍証にしている。参考文献は45篇。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Greater incidence of emergence agitation in children after sevoflurane anesthesia as compared
with halothane: a meta-analysis of randomized controlled trials. Kuratani N, Oi Y. Anesthesiology. 109(2):225-32. 2008
施設:埼玉医科大学麻酔学教室、三重国立病院麻酔科
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18648231?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
Pubmed_RVDocSum <MW>
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2.日本語タイトル:セヴォフルレン麻酔での術後覚醒時興奮の予防にクロニジンとミダゾラムを前向き無作為臨床コントロール試験で比較する
[目的]就学前の小児でセヴォフルレン麻酔での術後覚醒時興奮の予防に、クロニジンはミダゾラムより有効ではないかとの仮説を検定する。
[背景]臨床観察では、小児でセヴォフルレン麻酔での術後覚醒時興奮の予防に、クロニジンはミダゾラムより有効ではないかとの印象を受けた。
[対象]ASA I-IIの小児68例、手術は割礼(包皮切開)
[方法]患児68例を3群に分け、各々麻酔前30分にミダゾラム0.5 mg/kg, クロニジン2μg/kg, クロニジン4μg/kg を投与した。セヴォフルレン麻酔は、マスクを使用して笑気60%を加えた。ペニスに 0.5%ブピバカイン( 0.3 ml kg-1)と直腸パラセタモール(アセトアミノフェン)30 mg/kgを使用して鎮痛を図った。術後1時間、患児の疼痛と興奮を疼痛スケールで評価した。
[結果]
1)術後覚醒時興奮が有意に低下したのは、クロニジン4μg/kg 投与群のみであった。
2)術後1時間の覚醒時興奮発生率は、クロニジン4μg/kg 投与群で25%で、ミダゾラム群の60%より有意に(P=0.025)低かった。
3)興奮状態が15分以上つづいた患児の比率も、クロニジン4μg/kg 投与群で有意に低値だった。
4)痛みの評価値は、クロニジン4μg/kg 投与群では有意に、クロニジン2μg/kg 投与群では有意レベルには届かなかったが、ミダゾラム投与群より低かった。
5)麻酔導入の質が良好だったのは、ミダゾラム群で70%、クロニジン2μg/kg群で50%、 クロニジン4μg/kgでは30%であった。
6)低血圧・徐脈・術後最初の放尿までの時間・飲水時間などには、3群で差はなかった。
[結論]クロニジン4μg/kg 投与で、術後覚醒時興奮発生率はミダゾラム使用より低下する。他の副作用や合併症は特にない。
[解説者註]ベルギーからの発表。敢えて言えば、術後覚醒時興奮発生率についてはミダゾラムよりクロニジンが優れているが、前投薬の狙いである導入の状態ではミダゾラムのほうがクロニジンより優れていると結論している。そうすると、「麻酔ケア全体としては」この論文の結論は間違い、ないし少なくとも「結論は出ない」というべきかも知れない。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Oral clonidine vs midazolam in the prevention of sevoflurane-induced agitation in children. a prospective, randomized, controlled trial. Tazeroualti N, De Groote F, De Hert S, De Ville A, Dierick A, Van der Linden P. Br J Anaesth. 98(5):667-71. 2007.
施設:Department of Anaesthesia, CHU-Brugmann . Department of Anaesthesia, University Hospital Antwerp, Belgium
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17416907?ordinalpos=4&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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3.日本語タイトル:小児で扁桃腺とアデノイドの外来切除術で麻酔後の回復に影響する要因の解析
[目的]術後の病院滞在時間(length of stay:LOS)に影響する術前術後の因子を解析する。
[背景]麻酔の術後ケアユニット(postanesthesia care unit :PACU)の滞在時間に影響する要因は、小児の場合は術後覚醒時興奮、気管挿管後のクループ、未熟児の呼吸停止、点滴の継続などが特徴である。しかし、これまでのところPONV(術後の悪心嘔吐)・疼痛・出血・呼吸異常・閉塞性睡眠時無呼吸・緊急手術などが検討されているが、いずれも個々の要因の分析にとどまり、その組み合わせがLOS に及ぼす影響は検討されていない。
[対象]扁桃腺とアデノイドを外来で切除術と両側鼓膜切開+チューブ挿入を全身麻酔で受けた患者166例。年齢は1-18歳。ASA PSの1‐2. 種族・性・英語通用の良否は無関係。緊急手術は除外。
[方法]あらかじめ決められた基準にそってPACUを退出するまでの時間を主な結果として、要因を分析する。前投薬はミダゾラム0.5 mg/kg、麻酔はセヴォフルレン導入でロクロニウムを使って気管挿管、維持は笑気/イソフルラン+フェンタニル。患者にアセトアミノフェン坐剤使用。術後の PACUでのモニターはASA の規準に従った。
[結果]
1)PACU 入室からLOS滞在の期間は、平均106(±52)分だった。
2)LOS 延長を引き起こす要因として、PONV・年齢・酸素化低下(95%未満)のエピソード数の三つが同定された。上記三つのエピソードは、一つあるとLOSが30分延長した。
3)術前の気道感染・術後覚醒時興奮などは、LOS 延長の予測要因とはならなかった。
4)術前の両親の不安は、LOS 延長と弱い相関があった。
5)要因の組み合わせでは、いくつかに関係がありそうで検討した。
6)年齢とPONVと低酸素所見の三者が影響ありとの結果が得られた。
7)PONV があると、LOSは1.2時間延長した。
8)低酸素でもほぼ同様にLOSは1.2時間延長した。
9)年齢の影響は小さいが有意で、1歳加わるごとにLOSは2.2% 短縮した。
10)逆にPONV のない患者は、PACUが延びてLOSの延長する危険は少なかった。
11)同様に、低酸素状態にならないとPACUが延びてLOSの延長する危険は少なかった。
[結論]本研究は、LOSの要因を複合的にみたものとしては初めての研究である。
[解説者註]「LOSの要因を複合的にみたものとしては初めて」と自慢しているけれども、それにしては・・・・・・・。この著者の指摘している要因は、それはそれとして重要だが、そもそも扁桃腺とアデノイドは手術として「性質が悪」くてLOSが延びて当然のグループであり、それに術者の腕や麻酔科医の腕や考え方も関係しそうに思える。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
An analysis of factors influencing postanesthesia recovery after pediatric ambulatory tonsillectomy and adenoidectomy. Edler AA, Mariano ER, Golianu B, Kuan C, Pentcheva K. Anesth Analg. 104(4):784-9. 2007.
施設:Department of Anesthesia, Lucile Packard Children’s Hospital, Stanford University School of Medicine, Stanford, California.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17377083?ordinalpos=4&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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4.日本語タイトル:小児の術後覚醒時興奮:問題多く回答はわずか。
[目的]小児の術後覚醒時興奮を全般的に考察する。
[全般]新しい吸入麻酔薬が使われるようになり、術後覚醒時興奮の発生率が高いとして脚光を浴びている。術後覚醒時興奮は短時間ではあるが問題は大きく、しかも病因もふめいである。要因として麻酔自体、手術の種類、患者に内在する事柄などが考えられている。両親・医療担当者には不愉快で、時にはPACUや病院の滞在延長など実質的障害も発生する。原因の同定と治療のためにさらなる拳闘が必要である。
[病因として関係していると考えられるもの]
1)覚醒が急速なこと:セヴォフルレンはこの点で非難されるが、プロポフォルを反証に挙げる人もいる。
2)麻酔薬自体の性質:けいれん誘発性の薬物に問題があるという。
3)術後痛:ある程度の役割は果たしているだろう。
4)手術の種類:扁桃腺摘出が悪いという研究は多い。「窒息感を招く故か」ともいうが、手術自体の性質ではないか。
5)年齢 :児の年齢が低いほど悪い。
6)術前の不安:薬物で対応できるか
7)児の性格:感情的な性格、衝動性・社会性の欠如・環境適応性不良などの児童に発生率が高い。
8)併用薬物:抗コリン薬物・ドロペリドール・バルビチュレート・オピオイド・ベンゾディアゼピンなどがずべて術後覚醒時興奮と関連するとされる。
以上、どの因子も決定的な要因とは考えにくい。
[予防と治療]
1)病因が不明なので決定的な予防策はみつかっていない。
2)薬物としてはミダゾラム、クロニジン、フェンタニル、デクスメデトミジンなどが検討されある程度の成果は挙げているが、異論も大きく副作用などの問題も重大である。
3)変わったものとしては、メラトニン・オキシコドン・ケタミンなども候補になっている。
4)ケアの問題として、導入時に両親の所在が特に有用とはされないが、それでも術後には望ましいだろう。
5)さいわい術後覚醒時興奮は長期的な障害は招かないとされるが、招くとの研究結果もある。
[総括]
1)50年以上前にこの術後覚醒時興奮の問題が記述されているが、以来病因は判明せず、判断基準・予防法なども進んでいない。
2)セヴォフルレンとデスフルレン(おそらくイソフルランも)での術後覚醒時興奮発生率はハロセンやプロポフォルより高い。
3)若年齢・術前の不安・疼痛はいずれも寄与因子である。
4)しかし、不明の問題も多数残っている。上記薬物での発生率が何故高いのか。事前に予測や判定は不可能なのか。
5)事前に行える処置はないのか。薬物投与で防げるとして、その危険は?
6)発生率の高い就学前の児を対象とした研究がどうしても必要だ。
7)痛みのコントロールにも全力をつくすべきだろう。
[解説者註]本総説では"Emergence delirium (ED)"という用語を用いているが、意味はまったく同等なので訳語は他の論文と同様に術後覚醒時興奮で統一しておく。以前、このテーマでフィゾスチグミンの有効性を検討したが、今回の総説には登場しない。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Emergence delirium in children: many questions, few answers. Vlajkovic GP, Sindjelic RP.
Anesth Analg. 104(1):84-91. 2007:
施設:Department of Anesthesiology, Belgrade University Medical School; and Institute for Anesthesia and Resuscitation, Clinical Center of Serbia, Belgrade, Serbia.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17179249?ordinalpos=7&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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5:日本語タイトル:経口ミダゾラム投与で術後の児の振舞は改善するか:EBMのアプローチで
[目的]経口ミダゾラム投与で術後覚醒時興奮が防止できて、術後の児の振舞は改善するかを実証医療(EBM:Evidence-Based Medicine)アプローチで確認する。
[背景]術前に適用されてきた前投薬は多種多様である。気道刺激性のない吸入麻酔薬の普及によって、前投薬としてアトロピンの使用は減っている。現在では、前投薬の役割は不安の除去におかれ、この中で作用が短いミダゾラムが特に小児用として好まれている。この種の論文が多数あるので、まとめて検討する価値があるだろう。特に回答の欲しい問題としては、ミダゾラムの前投薬で術後の振舞が改善するかで、一つは麻酔終了直後病院内での問題、もう一つは児が帰宅して後の問題である。
[方法]PubMed とOVID プログラムに「ミダゾラム」と「前投薬」か「術前治療」を組み合わせて、文献検索した。検索条件としては、無作為割付によるコントロール臨床試験・英文論文・ヒトでの研究・対象は0〜18歳まで・1990年以降を採用した。論文171篇を抽出し、そのうちから条件に適合するものとして30篇を選んだ。それをEBM規準にしたがって、証拠のレベルと推薦のグレードを定めた。
[結果]
1)小児に経口ミダゾラムを前投薬として使うことで、両親から離れる不安と麻酔の不安が減少した。
2)術後の回復時間の延長は有意ではなかった。
3)経口ミダゾラムで術後覚醒時興奮が減少するという証拠は明確でなかった。
4)経口ミダゾラムで帰宅後の患者の振舞が改善するとの証拠も明確でなかった。
[術後覚醒時興奮への効果]
1)術後覚醒時興奮を特に検討した研究は8篇あった。
2)この8篇のうちで、ミダゾラムに術後覚醒時興奮減少の効果ありとしたのは2篇のみで、うち一篇はセヴォフルレン麻酔のみで有効とした。
3)ミダゾラムで術後覚醒時興奮の発生率が増大するとした研究論文が一篇あった。
4)8篇中のこり5篇はいずれも適正な研究論文で、ミダゾラムに利点なしとしていた。
5)したがって、ミダゾラムの前投薬で術後覚醒時興奮の発生によい影響があるとはいえない。
[結論]術前20〜30分前にミダゾラム0.5 mg/kg 投与で、児は鎮静し不安も減少した(A ランクの推奨)。したがって、このミダゾラム投与はルーチンに使用してもよいし、あるいは術前に不安状態にある児に使用するのもよいだろう。ただし、ミダゾラムのルーチン使用が安全という確認はとれていない。術後の回復時間は延長しなかった。経口ミダゾラムで術後覚醒時興奮が減少するという証拠はなかった。
[解説者註]ミダゾラムの前投薬を特に選んで検討している点が特徴で、術前の不安はとれるが術後覚醒時興奮の発生率の減少には無効と結論している。EBM の問題は、論文の質を評価してその信頼度などをきっちり分析している点にある。判定の仕方などは、論文の最後にしっかりと引用している。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Evidence-based clinical update: Does premedication with oral midazolam lead to improved behavioural outcomes in children?Cox RG, Nemish U, Ewen A, Crowe MJ. Can J Anaesth. 53(12):1213-1219. 2006
施設:Division of Pediatric Anesthesia, Alberta Children’s Hospital, University of Calgary, Calgary, Alberta, Canada.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17142656?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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6.日本語タイトル:成人患者のPACUでの術後覚醒時興奮
[目的]この前向き研究では、全身麻酔を受けた成人患者のPACUでの術後覚醒時興奮の発生率とリスク因子を定めることを狙っている。急性で短時間に限り、PACU退出時には消えている状態を対象とした。
[背景]全身麻酔を受けた患者の術後覚醒時興奮は、不明な要素が多い。発生率は3%程度といわれて小児と比較すれば少ない。それにしても、このテーマは小児での研究は多いが、成人での研究は乏しい。しかも、術後覚醒時興奮といっても定義もいろいろ、用語もいろいろで、さらにその度合いを評価するスケールもない。
[対象]三ヶ月間にPACU に入室した患者全員の1,359 例。
[方法]PACU は12床で24時間開き、手術室に隣接して開腹術・泌尿器・眼科・ENT・血管手術・腹腔鏡などが対象である。患者をRiker の鎮静スケールで興奮無、興奮有、強い興奮、危険レベルの興奮の4段階に分けた。評価は看護師が行い、この看護師は患者にケアに関与しなかった。年齢・性・ASA-PA、術前の因子(心臓・肺・神経・内分泌・腹部・精神・腎・がん・薬物中毒・アルコール中毒・長期ベンゾディアゼピン使用・長期抗うつ薬使用・術前不安・最近の手術歴・手術までの入院期間・緊急手術の有無・麻酔法と麻酔薬・筋弛緩薬使用の有無・PACU滞在期間と問題点・問題発生時にコントロールを必要とした人数など)を評価した。鎮痛薬と鎮静薬は、必要と評価したときに使用した。病因はPACU 担当の麻酔科医が評価した。データから、術後覚醒時興奮のリスク因子と発生率との関係を検討した。
[解析]患者をまず興奮の有無で分け、さらに興奮の度合いも考慮してサブグループに分けて分析した。
[結果]
1)1359例の年齢は平均51歳で、45%が女性であった。
2)PACUで術後覚醒時興奮を発したのが64例(4.7%)で、平均持続は15分で全員無事にPACU から退出した。
3)興奮は危険レベルが26%、強い興奮が32%、興奮ありが42%であった。危険レベルの興奮患者では、気管チューブの自己抜去(試みを含む)が3例 (4.7%)、カテーテルの抜去(試みを含む)が4例(6%:尿道カテーテルと点滴)、自傷(皮膚損傷)が2例(3%)、医療担当者損傷が3例(4.5%)であった。
4)術後覚醒時興奮のケアには通常スタッフ2名以上がかかわる必要があり、原因と考えられた要因としては気管チューブ(53%、34例)、疼痛(19.6%、13例)、不安(15%、10例)、排尿欲求(膀胱カテーテル存在にもかかわらず、4.5%、3例)、筋弛緩薬の効果残存(3%、2例)、尿閉(3%、2例)、酸素カテーテルを嫌う(3%、2例)などであった。
5)術前の不安はリスク因子ではなかった。
6)リスク因子として術後覚醒時興奮を悪化させる因子として同定されたのは、術前のベンゾディアゼピン使用(オッズ比=1.91, 95% 信頼限界:1.101-3.315, P=0.021)、乳房手術(オッズ比=5.190, 95% 信頼限界=1.422-18.947, P=0.013), 開腹手術 (オッズ比=3.206, 95% 信頼限界=1.262-8.143, P=0.014), 長時間手術(オッズ比=1.005, 95% 信頼限界=1.002-1.008, P=0.001)で、逆に術後覚醒時興奮を改善させる因子として同定されたのは、病気の既往(オッズ比=0.544, 95% 信頼限界=0.315-0.939, P=0.029)と抗うつ薬治療(オッズ比=0.245, 95% 信頼限界=0.084-0.710, P=0.010)の2因子であった。
[結論]術前のベンゾディアゼピン使用、乳房手術、開腹手術、長時間手術などが術後覚醒時興奮発生をうながすリスク因子として同定された。
[解説者註]成人を対象としている点と、因子を詳しく分析していくつかを同定している点が特徴といえよう。術前のベンゾディアゼピン使用が発生を促すというのが意外である。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Emergence delirium in adults in the post-anaesthesia care unit.Lepouse C, Lautner CA, Liu L, Gomis P, Leon A.Br J Anaesth. 96(6):747-53. 2006.
施設:Department of Anaesthesiology and Intensive Care, Hospital Robert Debre, CHU Reims, REIMS Cedex,F-51092, France
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16670111?ordinalpos=9&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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7:日本語タイトル:アデノイド摘出で小児のセヴォフルレン麻酔の術後覚醒時興奮をトロピセトロンかクロニジンで防止する
[目的]外来でのアデノイド摘出術をうける小児で、セヴォフルレン麻酔後の術後覚醒時興奮発生率をトロピセトロンかクロニジンで防止できるかを検討する。
[背景]術後覚醒時興奮は小児のセヴォフルレン麻酔では頻度が高い。セヴォフルレンは、導入が容易で覚醒も速く、循環動態も安定しているなど利点が多いが、この点だけは大きな欠点と言えるだろう。術後覚醒時興奮に関してはいろいろな要因が挙げられるが、いずれも決定的ではない。因子によっては、関連が判明しても解決できないものもある。さらに、予防と治療の方法がわかったとして、それを全例に予防的に適用すべきか、それとも術後覚醒時興奮発生をまって起こってから対応すべきかもわからない。薬物としては、クロニジン・オンダンセトロン(5HT3 拮抗薬の一つ)などの有効性が一応示されている。本施設では、別の5HT3 拮抗薬であるトロピセトロンをつかってうまくいっているようなので、系統的に検討することにした。
[研究の場]大学病院
[対象]1-7歳の児75例。前投薬なし。
[方法]プラセーボ群、トロピセトロン群、クロニジン群に無作為に割り付け。トロピセトロンは0.1 mg/kg、クロニジンは1.5μg/kg を、いずれも麻酔導入後に投与した。麻酔はセヴォフルレンで導入、維持した。アルフェンタニル(20μg/kg)とディクロフェナック (1 mg/kg:商品名ボルターレン、NSAIDの一つ)を併用し、術後痛はオキシコドン静注(0.05 mg/kg)で処置し、PACU 退出までの時間と事件を記述した。疼痛/不快スケールを判定して術後覚醒時興奮の判断にした。
[結果]
1)年齢・体重・手術時間・麻酔時間は3群に差はなかった。気管挿管や手術は円滑で、循環動態の問題もなかった。
2)術後覚醒時興奮の発生率は、トロピセトロン群で32%(=8/25)で、プラセーボ群の62%(16/26)より有意に低かった。
3)発生率は、クロニジン群では54%(13/24)でプラセーボ群と差がなかった。
4)覚醒時の嘔吐は、プラセーボ群で12例で8例は興奮状態と判定、トロピセトロン群で9例で3例は興奮状態と判定、クロニジン群で5例で2例は興奮状態と判定した。嘔吐の発生はプラセーボ群に比較してクロニジン群で有意に低かった。
5)ほぼ全例で術後にオキシコドンが必要で、回数はプラセーボ群で1.6回、トロピセトロン群で1.3回、クロニジン群で1.2回で、クロニジン群がかろうじて有意差が出た。
6)退出の時間は80〜99分で、3群に差はなかった。
7)追跡調査で手術翌日の状況に群間の差はなかった。
[結論]セヴォフルレン麻酔後の術後覚醒時興奮は、トロピセトロン0.1 mg/kg で発生を抑制できる。クロニジン1.5μg/kg では、プラセーボとの差がなかった。
[解説者註]トロピセトロンはナボパンという商品名で、セロトニン受容体(5HT3)に働くとされる制吐剤で鎮静作用もある。クロニジン(商品名カタプレス)は中枢性のα2受容体に作用して鎮静作用を発揮するので、メカニズムは違うようだ。なお、今回扱った別の論文(Tazeroualtiら)ではクロニジン1.5μg/kg では無効だが4μg/kg なら有効としているから、本研究の量で無効というデータと一致している。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
The prevention of emergence agitation with tropisetron or clonidine after sevoflurane anesthesia in small children undergoing adenoidectomy. Lankinen U, Avela R, Tarkkila P. Anesth Analg. 2006 May;102(5):1383-6.
施設:Department of Anesthesiology and Intensive Care Medicine and Department of ENT, Helsinki University Hospital, Helsinki, Finland
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16632814?ordinalpos=10&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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8:日本語タイトル:小児の脳MRI処置をセヴォフルレンで行う際に麻酔終了直前に少量のケタミンかナルブフィン使用で術後覚醒時興奮が防げる
[目的]小児の脳MRI処置をセヴォフルレンで行う際に、麻酔終了直前に少量のケタミンかナルブフィンを使用すると術後覚醒時興奮が防げるとの仮説を検証する。
[背景]小児の脳MRI処置には長時間の不動状態が必要で、全身麻酔をせざるを得ない。麻酔はセヴォフルレンでいいが、麻酔覚醒時に興奮の発生が欠点である。少量のケタミンかナルブフィン使用は術後覚醒時興奮防止に有効だが、ふつうの使い方では麻酔覚醒までに作用が切れてしまう。しかし、セヴォフルレン麻酔の終了直前に投与すれば、PACUでの覚醒はおくれることなく興奮も防げるようである。
[対象]MRIをセヴォフルレン麻酔でうける小児90例(6ヶ月〜8歳)。
[方法]パイロット研究で、ケタミン(1.0〜0.25 mg/kg)とナルブフィン(0.3〜0.1 mg/kg)の諸量をつかって、少量で有効との結論を得た。それで、前向き2重盲検法で無作為割り付けで検討した。患者を生食群(S)・ケタミン群(K)・ナルブフィン群(N)の3群に分け、覚醒の状態、PACU 入室後30分で退室の条件をみたすか否かを検討した。
[結果
]
1)児は男児56例、女児34例で、各群の例数はほぼ同数で、年齢・性別・ASA-PS・病像などほぼ同等だった。MRIは基本的に脳が対象だが、7例では他に脊髄披裂があって検査時間が長かった。術前に除外したり、検査中に事件が発生したことはなかった。
2)麻酔は自発呼吸で、PETco2 は50mmHg未満に維持できた。
3)術後の覚醒状態は3群で同等で、5例でSpo2の軽度低下(K群で1例、S群とN群で各2例)し、酸素+マスク換気1分間で解決した。嘔吐がS群で1例発生した。
4)興奮状態はS群に多く、一方術後5分と10分の時点でK群とN群の患者は反応が鈍かった。
5)術後5分、10分、15分の時点での覚醒状態は3群で不変だったが、30分の時点ではS群に比較してK群とS群で良好だった。
6)興奮状態はS群に多く、評価スケールによって有意レベルに達した時点が異なった。興奮の頻度はK群でN群より高く、15分の時点で差は有意だった。
7)麻酔終了後30分の時点で、S群よりK群とN群では覚醒してしずかにしている患者が多かった。
8)術後覚醒時興奮で泣いたり暴れている患者の率は、S群に比してK群とN群で低く特にN群で非常に低かった。
9)S群では、術後覚醒時興奮でNACU に3〜6時間滞在する児が5例あった。
[結論]ケタミンとナルブフィンを麻酔の終了直前に投与すると術後覚醒時興奮が防げる。特にナルブフィンのう効果が大きい。
[解説者註]ケタミンとナルブフィンという組み合わせが面白い。ナルブフィンは合成オピオイドでアゴニスト/アンタゴニストと分類されるが、私自身は使ったことがないだろう。そもそも日本に製剤があるか自信がない。ケタミンがこの目的に使える点が面白い。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Prevention of emergence agitation after sevoflurane anesthesia for pediatric cerebral magnetic resonance imaging by small doses of ketamine or nalbuphine administered just before discontinuing anesthesia.Dalens BJ, Pinard AM, Letourneau DR, Albert NT, Truchon RJ. Anesth Analg. 102(4):1056-61. 2006.
施設:Department of Anesthesiology, CHUL du Centre Hospitalier Universitaire de Que´bec, Que´bec, Canada
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16551898?ordinalpos=11&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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9:日本語タイトル:セヴォフルレン導入後にデスフルレンに切り替えて維持した場合、セヴォフルレンを麻酔全体で使った場合より、小児の術後覚醒時興奮は発生しにくい。
[目的]小児で、セヴォフルレンを通して使った場合と、セヴォフルレンで導入してデスフルレンで維持した場合とで、術後状態一般や術後覚醒時興奮発生が異なるかをPAED( Pediatric Anesthesia Emergence Delirium )スケールで正確に評価比較する。
[背景]新しい吸入麻酔薬は小児麻酔に好適だが、セヴォフルレンは導入に適するがデスフルレンは匂い刺激が強くマスク導入には適さない。一方、デスフルレンでも術後覚醒時興奮は起こるがセヴォフルレンよりは円滑なように感じる。そうすると、セヴォフルレン導入+デスフルレン維持という組合せば望ましいかも知れない。
[対象]12 ヵ月〜 7 歳までの児38例。
[方法]38例を半数に分け、一方はセヴォフルレンだけで麻酔し、もう一方はセヴォフルレン導入後にデスフルレン麻酔で維持した。抜管までの時間、アルドレティスコア、覚醒時の振舞と合併症、痛みの度合いなどを評価した。
[結果]
1)患者の年齢・体重・筋弛緩薬とアルフェンタニルの使用量・出血量・手術の種類・麻酔時間などは、両群で同等だった。
2)PAED スケールで、デスフルレン群は6点、セヴォフルレン群は12点で、デスフルレンはセヴォフルレンよりずっと良好だった。
3)抜管時間も、デスフルレンで5.4 分で、セヴォフルレンの13.4分より短かった。
4)PACU 到着時のアルドレティスコアも、セヴォフルレン患者で有意に低かった。
5)PACUから退出する時間、疼痛、好ましからぬ事件の発生率などは、両群で差がなかった。
6)術後24時間の経過も両群で差はなかった。
[結論]セヴォフルレンで通して麻酔するよりも、セヴォフルレンで導入してデスフルレンで維持するほうが、覚醒が早くて術後覚醒時興奮の発生率も低い。
[解説者註] これは明快なデータと結論で面白い。デスフルレンが日本にはないから使えないが、セヴォフルレンでスタートして点滴を入れてからプロポフォルに切り替えれば同様の効果が得られるはずで、あとで紹介する上園晶一先生の論文がこの手法だ。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Desflurane anesthesia after sevoflurane inhaled induction reduces severity of emergence agitation in children undergoing minor ear-nose-throat surgery compared with sevoflurane induction and maintenance. Mayer J, Boldt J, Rohm KD, Scheuermann K, Suttner SW. Anesth Analg. 102(2):400-4. 2006.
施設: Department of *Anesthesia and Intensive Care Medicine and †ENT Department, Klinikum Ludwigshafen, Ludwigshafen, Germany
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16428532?ordinalpos=13&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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10:日本語タイトル:小児の術後覚醒時興奮に対してセヴォフルレンとハロセンで麻酔する場合に仙骨麻酔の影響
[目的] 小児に対してセヴォフルレンとハロセンで麻酔する場合に仙骨麻酔で術後覚醒時興奮がどう影響するかを検討する。
[背景]ハロセンと比べれば、セヴォフルレンは導入も滑らかで循環動態も落ち着いており、不整脈も起こりにくく覚醒も速やかな点など優れているが、どうも術後覚醒時興奮の発生率が高いようである。この原因として、覚醒速度・薬物の性質(軽いけいれん性)・鎮痛作用の欠如などが指摘されている。疼痛が病因の一つかは明確ではないが、少なくとも鎮痛面をコントロールしていない。そこで、仙骨麻酔をつかって術後鎮痛をしっかりとケアして術後覚醒時興奮を検討する考え方がありそうだ。
[対象]12ヶ月〜6歳までのASA -PS 1度の児で鼡径ヘルニア手術を受ける患者68例
[方法]麻酔はセヴォフルレンまたはハロセンに無作為割り付け。術前不安状態はYPAS(Yale Preoperative Anxiety Scale)で評価した。児をミダゾラム0.5mg/kg 経口投与(+ブルフェン10mg/kg)で鎮静し、マスクで麻酔を投入し仙骨麻酔を施行した。術後、興奮度を4点法で評価した。
[結果]
1)術後覚醒時興奮の発生率は、PACU到着5分後の時点で、セヴォフルレンでは26%でハロセンの6%と有意差があったが、その後は差はなくなった。
2)術前の不安は、PACU入室時の興奮の頻度とその強度に相関した。
3)セヴォフルレンの術後覚醒時興奮は、術後鎮痛を施行すると覚醒直後の短時間の現象に抑えられる。
4)ハロセン群には、術後鎮痛用にモルフィンを使用した患児が2例いた。
5)PACU入室時の術後覚醒時興奮はセヴォフルレンで24%、ハロセンで12%で、統計的には有意レベルには達しなかったが、5分後に有意レベルに達した。
6)興奮スコアもセヴォフルレンでハロセンより高く、最高度興奮がセヴォフルレンで6例(18%)でハロセン1例(3%)で有意差だった。
7)この興奮はミダゾラムかモルフィン投与で解決できたが、その場合はPACU滞在が41分(対照は24分)と延長した。
8)導入時の不穏と術後の興奮は無関係だった。
[結論]術後鎮痛をしっかりケアするとセヴォフルレンの術後覚醒時興奮は避けられるのかも知れない。
[解説者註]仙骨麻酔の有無という研究でないのが残念だが。セヴォフルレンの術後興奮が仙骨麻酔をしても防げないというか、発生率が目だって低下しないというのが少し意外で、私がもっている印象とは違う。論文には「術後鎮痛のために仙骨麻酔」と書いてあるが、手術の前にすでに局所麻酔薬が投与されていて、術中も効いていると推測する。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
The effect of caudal analgesia on emergence agitation in children after sevoflurane versus halothane anesthesia.Weldon BC, Bell M, Craddock T. Anesth Analg. 98(2):321-6. 2004.
施設:Departments of Anesthesiology and Pediatrics, University of Florida College of Medicine, Gainesville, Florida.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14742362?ordinalpos=25&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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11.日本語タイトル:セヴォフルレン麻酔後の興奮をデクスメデトミジンの一回投与で防止できる
[目的] デクスメデトミジンを予防的に投与してセヴォフルレン麻酔後の興奮を防止できるかを小児で検証する。
[背景]小児の術後覚醒時興奮はセヴォフルレン麻酔後に発生率が高い。報告によっては80%という数値を挙げているものもある。その治療と予防には各種鎮痛薬・オピオイド・ベンゾディアゼピン・クロニジンなどの使用が報告されている。デクスメデトミジンはクロニジンより選択性の高いα2アドレナリンアゴニストだが、鎮静鎮痛作用があってこうした興奮の抑制にも効果があると推測できる。
[対象]体表面の下腹部と泌尿器の手術を受ける1〜10歳の小児90例。
[方法]患児でデクスメデトミジンが術後の病像に与える作用を検証した。セヴォフルレンで麻酔を導入後に、患者は生食群(G1)、デクスメデトミジン0.15μg/kg群(G2)、デクスメデトミジン 0.3μg/kg群(G3)に分けた。各群30例ずつである。ラリマを挿入後、全例に仙骨麻酔を施行した。麻酔導入の10分後に、上記の薬物を投与した。セヴォフルレン1%(呼気終末濃度)+50%笑気と自発呼吸で麻酔を維持した。麻酔終了時から、呼びかけに応じて開眼するまでの時間(TEO:time to eye opening)と覚醒の特性を記録した。
[結果]
1)3群で全身状態と術中パラメーターは差はなかった。
2)呼びかけに応じて開眼するまでの時間はG1で7.5分、Group2で8.2分、G3で9.8分で差はなかった。
3)術後覚醒時興奮の発生率は、G1で37% 、G2で17%、G3で10%で、これをG1とG3で比較すると、有意差に達した。
4)麻酔導入時の興奮と覚醒時の興奮には相関がなかった。
5)PACU退出までの時間は3群で差はなかった。
[結論]麻酔導入10分後にデクスメデトミジン0.3μg/kgを投与すると、セヴォフルレン麻酔後の術後覚醒時興奮が減少し特に合併症もなかった。デクスメデトミジンに起因すると思える障害はみられなかった。
[解説者註] この研究では、デクスメデトミジン0.3μg/kgが有効というデータを出している。ある程度の量が必要ということか。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Single-dose dexmedetomidine reduces agitation after sevoflurane anesthesia in children. Ibacache ME, Munoz HR, Brandes V, Morales AL. Anesth Analg. 98(1):60-3. 2004.
施設:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14693585?ordinalpos=26&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_
ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum <MW>
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12:日本語タイトル:手術なしのセヴォフルレン麻酔後に少量フェンタニルを投与して覚醒状況が変化する
[目的]手術なしのセヴォフルレン麻酔(MRI検査)後に少量フェンタニルを投与して、覚醒状況がどのように変化するかを検証する。
[背景] 術後覚醒時興奮は実に数多くの研究の対象になっている。セヴォフルレンは特に術後覚醒時興奮の発生率が高いらしい。この術後覚醒時興奮で重大な問題が起こってはいないが、これが強ければせっかく覚醒が早くてもその利点が消えてしまう。そもそも、セヴォフルレンはハロセンとくらべれば手術があろうがなかろうが、術後覚醒時興奮の頻度が高い。ところで、本研究では少量のフェンタニル静注で覚醒時の特性がどう変化するか。特に手術がないので疼痛はない条件でフェンタニルの作用を検討する。
[対象]18ヵ月〜10歳までのASA PS IかIIの患者32例。
[方法]MRI のためにセヴォフルレン麻酔を投与する患者を、麻酔終了前10分にプラセーボ群(P)とフェンタニル1μg/kg 群(F)に分けた。まず、術前に患者と家族に麻酔導入のビディオを見せ、また両親が望めば麻酔導入時に滞在を許可した。前投薬は担当麻酔科医にまかせたが、全体の使用率は10%であった。ただし、術前にミダゾラムを使用した患者は研究の対象外とした。麻酔は笑気/酸素(5L/2L+セヴォフルレン)で導入し、維持は酸素(2 L/分)と流量を下げた。点滴は導入後に入れた。ラリマで自発呼吸で麻酔を維持し、モニターは血圧測定・心電図・Spo2・カプノメーターを使用し、麻酔の終わりに、患者の反応がない時点でラリマを抜去した。PACU 到着で児が覚醒した時点で点滴を抜去した。その後、術後覚醒時興奮の発生率と興奮の持続時間と退院までの時間を評価した。
[結果]
1)術前の神経学的症状・術前鎮静の必要があれば、本研究から除外した。
2)フェンタニルを受けた患者では興奮の発生が少なかった(12%、対照は56%)が、退院までの時間には差がなかった。
3)「けいれん発作」でMRIを受けた患者のうち、1例で検査中にけいれんが起こったが後遺症はなかった。
4)掻痒感の訴えや嘔吐はおきなかった。
5)年齢・体重・性などを考慮しても、フェンタニルの有効性の度合いは不変であった。
6)高年齢と女児では術後覚醒時興奮発生率が低い傾向があったが、統計的有意レベルには達しなかった。
[結論]セヴォフルレン麻酔終了の少し前にフェンタニル1μg/kg を投与すると、術後覚醒時興奮の発生率が低下する。MRI 検査という痛みのない麻酔で得た結果なので、この効果はフェンタニルの鎮痛効果とは無関係と結論する。
[解説者註]MRI検査という条件でフェンタニルの効果を確認して、「鎮痛作用ではない」という結論は説得力があるといえるだろう。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
The effect of small dose fentanyl on the emergence characteristics of pediatric patients after sevoflurane anesthesia without surgery.Cravero JP, Beach M, Thyr B, Whalen K. Anesth Analg. 97(2):364-7. 2003.
施設:Department of Anesthesiology, Dartmouth-Hitchcock Medical Center, Lebanon, New Hampshire
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12873918?ordinalpos=27&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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13:日本語タイトル:小児の術後覚醒時興奮の前向きコホート研究
[目的]小児の定時手術の術後覚醒時興奮の発生率、発生の予知因子、後遺症などを検索する。
[背景]術後覚醒時興奮にはいろいろな要素があり、研究も多い。
[対象]外来で定時手術を受ける3〜7歳の小児でASA-PSIとIIの521例。
[方法]術前術後の問題はすべて記録した。親は患児の振舞について詳しい質問表に回答する。児の認識力が適切なことを、本研究参加の条件とした。4ヶ月〜5ヶ月の連続サンプルを2回施行して、ほぼ1年をカバーして季節によるバイアスを避けた。周術期のケアは担当麻酔科医に一任した。
[結果]
1)術後覚醒時興奮 を発したのは96/521つまり18%で、その持続は最短で3分最長45分で平均14分であった。その52%で薬物を投与した。
2)術後ケアは術後覚醒時興奮発症群で117分で、興奮のなかった群の101分より有意に延長した。
3)術後覚醒時興奮と関与する因子として同定されたのは、年齢、既往に手術経験なし、適応性障害、眼科手術、耳鼻科手術、セヴォフルレン、イソフルラン、セヴォフルレン+イソフルランの組み合わせ麻酔、鎮痛薬、覚醒までの時間が短いの10因子で、特にセヴォフルレンで導入してイソフルランで維持した麻酔では術後覚醒時興奮発生率が他の麻酔に比して2倍高かった。また10因子のうち耳鼻科手術、イソフルラン、覚醒までの時間の3因子は独立リスク因子と評価された。一方、ラボナール使用で術後覚醒時興奮発生率が低かった。
4)耳鼻科手術患者が42例(26%)、眼科手術患者が23例(28%)と多く、泌尿器(15%)、整形外科(15%)、一般外科(12%)、その他(6%)などが少ないほうだった。
5)術後覚醒時興奮の種類は、のたうちまわる(86%)のと蹴とばす(64%)、他にただ体動と話が通じない状態(14%)であった。押さえつける必要のあったのが56例(60%)で、しかも42%では二人以上の介護が必要だった。
6)薬物投与については、必要のなかったのは48%で薬物投与を必要とした例より退出が早かった。薬物は、オピエイト使用が50例(52%)、ベンゾディアゼピン使用が2例、両方が2例だった。術後覚醒時興奮のない患者でも77例(18%)でオピエイトかベンゾディアゼピンを使用した。
7)術後覚醒時興奮の合併症が5例あり、術野からの出血1例、ドレーンと点滴抜去が2例、手術部痛増加1例、看護師の怪我が1例であった。
[結論]500例あまりの検討で、術後覚醒時興奮発症にかかわる因子が10件確認できた。
[解説者註]この調査は例数も多く、またいろいろな因子の検出に成功している。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
A prospective cohort study of emergence agitation in the pediatric postanesthesia care unit. Voepel-Lewis T, Malviya S, Tait AR. Anesth Analg. 96(6):1625-30. 2003.
施設:Department of Anesthesiology, Section of Pediatrics, C. S. Mott Children’s Hospital, Ann Arbor, Michigan
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12760985?ordinalpos=28&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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14.日本語タイトル:小児での術後覚醒時興奮:セヴォフルレン麻酔とプロポフォル麻酔の比較
[目的]麻酔をセヴォフルレンで導入しても維持にプロポフォルを使えば術後覚醒時興奮の発生は抑制できるという仮説を検証する。
[背景]セヴォフルレンでは術後覚醒時興奮の発生率がハロセンより高い。プロポフォルのデータは乏しいが、セヴォフルレンに比較してその発生率が低い印象である。
[対象]眼の検査で短時間の全身麻酔を反復する就学前の児16例。
[方法]この群の患児は麻酔を反復するので、クロスオーバー法(同一患者に別の時点で二つの方法を適用する)を採用した。患児はASA-PSのIかIIで、平均年齢は1.5歳。全員セヴォフルレンかハロセンの全身麻酔を経験していたが、プロポフォルの経験はなかった。前投薬としてミダゾラム0.5mg/kg を経口で投与した。セヴォフルレンで導入して、麻酔維持をセヴォフルレンで続けるかプロポフォルに切り替えるかを無作為に定め、数ヵ月後の次の麻酔の際に前と反対の方法で麻酔維持した。オピオイドは使用しなかった。麻酔覚醒後に抜管し、PACUに移送した。以下の条件でPACUを退出させた:全身状態安定、気道が確実に維持できている、Spo2 が空気吸入で95%以上、疼痛の訴えなし。PACUを退出して病棟に戻ってからは、患児または親の希望で経口摂取を許可した。患児は男児7例、女児が9例であった。覚醒の速度と質を医療関係者が評価し、同時に両親の意見も訊いた。
[結果]
1)第一回目の麻酔は、セヴォフルレンとプロポフォルが各8例であった。セヴォフルレン8例中3例(38%)に術後覚醒時興奮が発症した。一方、プロポフォル8例では術後覚醒時興奮発症者はゼロであった。
2)その術後覚醒時興奮にもかかわらず、セヴォフルレンのほうがPACU滞在時間は短かった。
3)全体としても、この傾向は同じで、セヴォフルレンでは術後覚醒時興奮の発生率が高く38% (6/16)であり、プロポフォルではゼロであった。
4)術後覚醒時興奮の持続した中央値は8 分であった。
5)術後覚醒時興奮は、他の呼吸と循環の合併症を伴わず、特に薬物をつかわずに自然に消滅した。
6)計32回の麻酔で、2回の嘔吐が記述された。PACUでなくて病室に戻って発生し、双方ともセヴォフルレン麻酔の後であった。
7)麻酔からの覚醒はプロポフォルよりセヴォフルレンのほうが早かったが、麻酔に対する親の満足度はプロポフォルのほうが高かった。
[結論]術後覚醒時興奮はセヴォフルレンでは起こるがプロポフォルでは発生しない。
[解説者註]上園晶一先生(慈恵大学教授)や後藤隆久先生(横浜市大教授)らの若き日の業績である。麻酔に対する親の満足度が、プロポフォルが高いというのは当然だろう。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
Emergence agitation after sevoflurane versus propofol in pediatric patients.Uezono S, Goto T, Terui K, Ichinose F, Ishguro Y, Nakata Y, Morita S.Anesth Analg. 91(3):563-6. 2000.
施設:Department of Anesthesiology, Teikyo University and Ichihara Hospital, Chiba, Japan
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10960377?ordinalpos=38&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
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15.日本語タイトル:術後覚醒時興奮へのフェンタニルの効果とセヴォフルレンとデスフルレン
[目的]術後覚醒時興奮へのフェンタニルの効果をセヴォフルレン麻酔とデスフルレン麻酔で検討する。(注:この抄録は他と異なり、同じ第一著者の二つの論文の内容を併合しました。解説者)
[背景] デスフルレンやセヴォフルレンのような覚醒の速い薬物を小児に使うと、術後覚醒時興奮が起こりやすい。フェンタニルを加えると、術後覚醒時興奮の頻度が下がるようである。
[対象]デスフルレン麻酔でアデノイド切除術をうける小児32例でフェンタニル量は各種。次の研究では2〜7歳の小児100例で麻酔はデスフルレンかセヴォフルレンでフェンタニル量は2.5μg/kgに固定。
[方法]フェンタニルを1.25, 1.87, 2.8, 4.2μg/kgの4段階をつかって、古典的なアップアンドダウン法で適正投与法を決める。覚醒から回復室での経過を抜管までの時間・PACU滞在時間・退院までの時間・興奮疼痛の有無・嘔吐などを記述した。
[結果]フェンタニルの効果
1)対象の32例中、投与量1.25μg/kgでは9例中5例で無効,1.87では14例中7例で無効,2.8では8例中1例無効,4.2投与は1例だけで無効なしであった。
2)以上より、術後覚醒時興奮を減らすのに有効なフェンタニル量は、2.5+/- 6.2μg/kgと算出された。
3)その信頼限界は0.38だった。
4)術後の意識回復に関しては、咳・顔をしかめる・意味のある体動・開眼・抜管・PACU退去時間などで、フェンタニルの投与量は有意な差を招かなかった。
5)術後嘔吐発生率は75%と高率だった。
セヴォフルレンとデスフルレンの比較
1)つよい術後覚醒時興奮の発生率は、デスフルレンで24%、セヴォフルレン18%で差はなかった。
2)抜管までの時間とPACU滞在時間は、デスフルレンではセヴォフルレンより短かった。
3)セヴォフルレンではデスフルレンと比較して覚醒までの時間が3分長かった。
4)PACUからの退去までの時間は両群に差はなかった。
5)強い興奮(3以上)、強い疼痛(6以上)、嘔吐の頻度などは両群に差はなかった。
[結論]アデノイド切除の児童に対して、フェンタニル2.5μg/kg で術後覚醒時興奮は防止できて、しかも覚醒遅延を招かない。セヴォフルレンとデスフルレンでは、デスフルレンのほうが覚醒が早いが最終的なPACU退出には差はない。
[解説者註]二つの研究ともわかりやすい。
[解説者]諏訪邦夫
原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ, 年:
The effect of fentanyl on the emergence characteristics after desflurane or sevoflurane anesthesia in children. Cohen IT, Finkel JC, Hannallah RS, Hummer KA, Patel KM. Anesth Analg.94(5):1178-81. 2002.
The incidence of emergence agitation associated with desflurane anesthesia in children is reduced by fentanyl. Cohen IT, Hannallah RS, Hummer KA. Anesth Analg. 93(1):88-91.2001.
施設:Departments of Anesthesiology and Pediatrics, Children’s National Medical Center and George Washington University Medical Center, Washington, DC <MW>
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11973185?ordinalpos=34&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
Pubmed_RVDocSum
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11429345?ordinalpos=36&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.
Pubmed_RVDocSum
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